お弁当 [エッセイ]
昔から、お弁当が好きだ。
レストランでの食事も自宅で囲む食卓も、どちらも好きだけれど、お弁当にはそれらとはまた違う独特の趣がある。
まず、何が入ってるのかと、蓋を開けるまでのドキドキ感がいい。
たまご焼きの黄色、ほうれん草の緑、ピンクの焼き鮭。日の丸ご飯になすの漬物。
少しずつぎっしり詰まった色鮮やかなおかずは、見ているだけで心を浮き立たせる。
逆に、茶一色のお弁当も悪くない。
炊き込みご飯、から揚げ、味の染みた煮物、がんもどき。
田舎風のラインナップも、それはそれで乙なものだ。
新幹線の中、移りゆく車窓の風景を眺めながら、一品一品をゆっくりと味わっていく。
日常の喧騒をしばし忘れさせてくれる、至福のひと時。
ちょっと冷えたおかずも、梅干の赤が色移りしたご飯も、普段だったら甘すぎるおかずの味付けも、お弁当だと何故か無性に嬉しくなってしまうのが不思議だ。
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幼い頃。
今では想像できないけれど、私は人見知りが激しく恥ずかしがりな子供で、”大勢の人がいる場所”というものが、本当に苦手だった。公園で滑り台やブランコに乗ったりすることすら、私にしてみれば公共の場で全裸を晒しているに等しく、いつも周りに人影がないことを見計らってからこっそりと乗ったものだ。
家の中や気を許した一部の友人相手には元気に振舞えるのだけど、外では萎縮してしまう。
まぁ、いわゆる内弁慶タイプの子供だった。
そんな私にとって、遠足や運動会で一緒にお弁当を食べる友達を見つけるという作業は本当に勇気のいることだった。
「じゃあ、お昼にしましょうか」
先生の合図でわぁっと駆け出す子供たち。
あちらこちらで楽しそうに円が描かれていく中、一体どこに混ざればよいのやら、出遅れた私は半べそをかきながらうろうろ歩き回る。
どうしよう。混ぜてって言えばいいのかな…
でも恥ずかしいし、一人で食べようかな…
「あれ、ゆきちゃん何してるの?」
その内に気のつく友人の誰かが声をかけてくれて、そこで幼い私はようやくほっと腰を下ろし、お弁当の包みを解くことができるのだった。
~~
あんな時代もあったなと、懐かしい気持ちで箸を進める。
気になっていた男の子に、から揚げと交換にもらったウインナー。
徒競走で派手に転び、泣きながら食べた塩むすび。
中学時代、母と大喧嘩した翌日の、大好物の三色そぼろ。
おかずの数だけ無数に思い出は存在し、箸を進めるたび、現代の私の心が童心で満たされてゆくのを感じる。
きっとお弁当とは、つまるところ幸福な記憶の象徴であり、その記憶がもたらす安心感こそが、お弁当の美味しさの何よりもの隠し味なのだろう。
さて、話が脱線しましたが、この前食べたお弁当。
世界遺産記念の平泉弁当。1300円。
なんともめでたいこの感じ。
ちなみにおかずのラインナップが、アワビにウニと超豪華すぎたため、連動する思い出がなく全く郷愁は呼び覚まされませんでしたが、それでも大変美味しくいただきました。
「平泉弁当」、豪華ですね・・・
仙台駅は、駅弁の販売種類が全国一の多さを誇っていましたが、最近はそれに加えて、東北各地の駅弁も常時買えるようになり、駅弁好きな私にはうれしい限りです。
小学生の時、仕事で忙しかった母が遠足のときに弁当作りまで手が回らず、当時駅前青葉通りにあった「○ば○し」のお店で駅弁(確か栗めし弁当だったと記憶)を買って持たされたことがありました。
それ以来、駅弁も「おふくろの味」のひとつに加わりました(笑)
by 雅楽太 (2011-09-22 04:47)
>雅楽太さん
コメント有難うございます。
そうそう!最近東北各地の駅弁があるのが嬉しいんですよね^-^
今度は何を買ってみようか、今からわくわくです。
栗めし弁当、いいではないですか~~
芋栗南瓜の美味しい季節。秋ですね♡
by yukirdam (2011-09-23 00:40)