SSブログ

べり~~グッド!! [エッセイ]

同門のポルトガル人の男の子の口癖。

「コンサートどうだった?」
「試験どうだった?」
「うまく弾けた?」

いつでも彼の答えは変わらない。
自信たっぷりに、満面の笑みで、時には親指すら立てて見せながら、1ミリの迷いも見せずに即答。
「Very Goooood!!」

私だったらこうはいかない。
一番多いのが「well...It was ok.」
次いで「not very bad」とか「as usual」とか。
良かった時でも「Good」どまりで、更に「But,I made some…」なんてのがくっついてくる。
ひどい時には「I don't know」

この自画自賛がうまく出来ない傾向、日本では更に顕著であった。
なにしろ桐朋時代、試験を終え部屋から出てくる時のお決まりの台詞が、
「最悪。もうおわった~~!!」

これは文字で書くとニュアンスが伝わりにくいのだが、試験自体が終了したということではない。
自分の演奏がもうお話にならないくらいどうしようもなかったという意味合いで、試験当日の校内では、この台詞がもうそれこそいくつもいくつも飛び交っていたものだった。
しかし実際蓋を開けてみればなんてことはない。
本当に大失敗して心底落ち込んでいるのは全体の四分の一にも満たず、みんな「最悪だったよぉ~」なんて言いながらにこにこ笑っているのだから、これは日本人の特殊な表現方法と言わずして他に何と言えよう。

しかし、ここで
「もう最高だったよ!!」
などと答えようものならば、その場が一気に白けるであろうことは目に見えているし、
反対にヨーロッパで
「It was so bad」
なんて答えれば、言葉をそのまま受け止め、相当にひどかったのだろうと推測した外人たちから、同情気味に「…元気出して」などと肩をたたかれる事になってしまうだろうから、これはもうつまり根本的な文化の違いであり、どうしようもないことなのだとは思う。

どちらが好ましい態度なのか……それは多少答えに窮する。
ヨーロッパで三年を過ごしてきて、外人のストレートな物言いや結果を前向きにとらえようとする姿勢に共感を覚え、自分への絶対的な自信を持ち続けられる彼らを羨ましく思ってきたのは紛れもない事実だ。
しかし私はやはり日本人であるから、自分を卑下してみせる言動の背景にあるのが、
「自分への厳しさ」「もしかしたら失敗してしまったかもしれぬ相手への無意識レベルの思いやり」であると信じているし、それを非常に美しい心であるとも思うのだ。

そんなどっちつかずの私は、だからいつになっても「It was ok」が精一杯。
文化以前に、本当にどこにも後悔の残らない、誰しも認めざるを得ないような演奏をすればいいじゃないか、とも思うのだけど、結局私は日本人だから、自分に100%満足できることはおそらくこれからも有り得ないだろうと、もうどこかで分かってしまっていて。
それが誇らしくも、やっぱりすこし、かなしい。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントの受付は締め切りました

トラックバック 0

レッツ★カラフル寝る子は育つ? ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。